後立山南部(長野) 爺ヶ岳中峰(2669.9m)、南峰(2660m) 2023年10月8日  カウント:画像読み出し不能

所要時間 1:59 柏原新道登山口−−3:25 一枚岩(標高2000m)−−4:36 種池山荘−−5:28 爺ヶ岳中峰 6:08−−6:26 爺ヶ岳南峰−−6:54 種池山荘−−7:37 一枚岩(標高2000m)−−8:24 柏原新道登山口

場所長野県大町市/富山県中新川郡立山町
年月日2023年10月8日 日帰り
天候
山行種類一般登山
交通手段マイカー
駐車場登山口前に駐車場あり
登山道の有無あり
籔の有無無し
危険個所の有無無し
山頂の展望南峰、中峰とも邪魔するものがなく晴れれば大展望
GPSトラックログ
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コメント天気の都合で前日の蝶ヶ岳に続いて初めての連日の日帰り北アルプスを敢行。休憩日無しで大丈夫か心配だったが意外と登れてしまった。下界から見た爺ヶ岳は山頂付近が白く、確実に積雪しているのは分かっていたが思ったよりは多くはなく、山頂付近の北側斜面の吹き溜まりで20cm程度が最大で、日が当たる場所ではほとんど雪は残っていなかった。冬型の気圧配置が緩んだ直後で好天の大展望を期待したが曇り空で空気の透明度が悪く、槍穂さえ見えなかった。気温は蝶ヶ岳よりは少し高くおそらく-1℃くらいだったと思う。


西側から見た爺ヶ岳南峰、中峰、北峰。北斜面に雪が多い


登山口前駐車場。夜中に満車になった 扇沢駅の明かり
先人の足跡。追いつくことはなかった 標高1900m付近で雪が現れる
標高2060m付近 標高2250m付近
種池山荘。明かりが灯っていた 富山側の町明かり
金星と爺ヶ岳南峰のシルエット 爺ヶ岳中峰山頂
爺ヶ岳中峰から見た爺ヶ岳南峰 日の出前の東の空
爺ヶ岳中峰から見たパノラマ展望写真(クリックで拡大)
爺ヶ岳中峰から見た立山〜剱岳
日の出直前に垂直の光の筋が立つ 日の出
四阿山中腹から日が出た 山頂標識のエビのしっぽ
爺ヶ岳中峰から見た鹿島槍ヶ岳 爺ヶ岳中峰から見た鹿島槍南峰。まだ無人だった
爺ヶ岳中峰から見た冷池山荘。既に営業終了 爺ヶ岳中峰から見たテント場
鹿島槍へ向かうパーティー 棒小屋沢。紅葉は僅か
爺ヶ岳中峰から見た南峰山頂 岩にもエビのしっぽが張り付いていた
南峰に向かう 鞍部の標識に付いたエビのしっぽ
ロープにも盛大なエビのしっぽ 20cm以上ある特大サイズエビのしっぽ
爺ヶ岳南峰山頂 爺ヶ岳南峰から見た中峰
爺ヶ岳南峰から見た西側の稜線 爺ヶ岳南峰から見た冷池山荘
下山開始 シラビソに付いたエビのしっぽ
シラビソが白い ダケカンバは紅葉せず枯れるか緑のまま
シラビソ ハイマツの上にはほぼ雪無し
夏のお花畑は真っ白 テカテカに凍っている
種池山荘前 下山開始の登山者
中腹の紅葉はイマイチ ガラ場
標高2260m付近 針ノ木岳
ダケカンバの黄色がほぼ見られない アザミ沢
ミネカエデは色付いていた 標高2120m付近
扇沢駅。まだ駐車場に空きあり オヤマリンドウ
対岸の駐車場 登山口前駐車場


 体育の日、いや、最近では「スポーツの日」の3連休の初日は蝶ヶ岳に日帰りで登り、穂高、槍の初冠雪した姿を拝むことができたが、意外にも蝶ヶ岳には雪は無かった。本来は翌日は休養日として連休最終日に再び北アルプス日帰りを敢行するのだが、今回は天気予報で連休最終日は雨が確実な情勢。仕方なく2日連続で北アの日帰りに挑戦することにした。過去にこのペースで登った経験は1度だけだったように記憶している。

 この計画は連休に入る前に考えていたため、初日は体力をセーブする意味でも蝶ヶ岳を選択したが、翌日も軽い部類の山でないと地獄を見るのは明らかであり、行先は爺ヶ岳とした。今度は積雪は確実にあるだろうが、登山者数は多いはずなのでトレースが期待できるのでラッセルは不要だろう。まあ、この時期はまだ淡雪で軽いから大したラッセルにはならないだろうけど。ガラ場付近が埋もれるほどの積雪は無いだろうからまだ危険度は少ないだろう。

 蝶ヶ岳を下山後、大町で買い物を済ませて夕方に登山口へ。この時間帯なら日帰り登山者の車がはけて登山口前駐車場に空きがあると予想したがその通り。なお、スノーシェッドを下った駐車余地にも車があったので、降雪直後にも関わらずかなりの登山者が入ったことが分かる。種池山荘は来週末が今年最後の営業日ということも影響しているかもしれない。

 夕方の時間帯なのでもう下山してくる人はいないと思ったら何人もいてびっくり。隣の車の主も下ってきた。こんな時間と言うことは鹿島槍往復だろうか。25リットルくらいの小さなザックで、これで積雪の山に行ったのか?と疑問に思える姿であった。もしかしたら予想より雪は少ないのかもしれない。とは言え雪の装備は必要であり、軽アイゼンとロングスパッツを持った。まだ積雪が少ないのでピッケルの出番は無いだろう、というかピッケルはまだ車に積み込んでいないけど。

 山頂に日の出の時刻に到着するよう出発時間を調整。今の日の出は午前6時前で、昨日の疲労を考慮して所要時間を4時間と見積もって午前2時頃出発として午前1時に目覚ましを設定したが、何と目覚ましが電池切れでアラームが鳴らず、目覚めたら午前1時20分であった。急げば間に合うので特急で朝飯を食って午前2時に出発できた。気温は昨日よりは高いように感じるが半袖では寒い温度なので、出発時は長袖で歩き始めた。

 出出しの足の重さは思ったより酷くはなく、これなら時間はかかっても山頂に到着できそうだ。すぐに体が温まって半袖に変身するが、冷え性で末梢が冷えるので手袋、毛糸の帽子は着用したままである。頭上は星空と明るい月が出ているので快晴らしい。昨日夕方は稜線には雪雲がかかっているのが大町市街地から見えたが、今は雲が取れているようだ。

 私の前後に光は見えないが、小さな水たまりの先の乾いた石の上には靴底のパターンが残っていて先行者がいることが分かった。しかし樹林帯なので見通しが悪く、先行者の光は最後まで見えなかった。おそらく時間差は30分以上あったのだろう。

 標高1900m付近で登山道脇に僅かな雪が登場。蝶ヶ岳で雪が出てきたのは標高2300m付近だったので後立山ではかなり低いところから雪がある。これだと稜線はそれなりの積雪かもしれない。周囲に雪が残っていても登山道は多くの人に踏まれて雪は解けているが、気温が下がって雪解け水が凍っているのが厄介だ。特に湿った岩の表面が薄い氷でコーティングされているのがいやらしく、石の平らな面を避けて角を踏むようにして歩いた。木の階段も霜が降りてキラキラ輝いて、いかにも滑りやすそうであった。しかし日当たりがいい場所の岩は表面が乾いていて、ガラ場付近の岩は氷のコーティングはなく歩きやすかった。

 森林限界を抜けて種池山荘に到着すると、珍しくも多くの部屋に明かりが点いていた。今年の日の出前の種池山荘で広範囲の部屋で明かりが点いていたのは今回が初めてだと思う。発電機のエンジン音も聞こえていた。既に爺ヶ岳方面へ向けて歩き出した登山者の明かりが見えている。

 稜線に出て積雪が一気に増えるかと思いきや、相変わらず登山道上に雪は無いが雪が溶けて水溜りになった箇所がことごとくツルツルに凍結していた。私にとって今年の初氷である。水溜りがあるのは平坦な場所だけのはずで、それは短距離だけなのでアイゼンは出さずに通過。前方のはるか先、爺ヶ岳中峰直下に光が見えているが、おそらく鹿島槍往復の登山者だろう。まだ真っ暗なので稜線上部の積雪状況は不明だ。稜線は黒くシルエットで浮かび上がり、背景には明るい金星が輝いていたので、まだこの時点では快晴だったはずだ。

 稜線直上に出ると富山県側の町明かりが見えていて、南には大町市街地の夜景。稜線では北西の風が少しだけ吹いて寒くなったので、半袖シャツの上にウィンドブレーカを着た。まだ登山道に雪は無く、周囲のハイマツの中に少し雪が残るだけでちょっと拍子抜けだ。昨日は下界から爺ヶ岳の山頂が見えていていたので、森林限界を越えて日が当たる場所では雪が溶けたのだろう。ただし、夕方には山頂は雲に覆われていたので、新たに積雪があっても良さそうだが。現に中腹では笹の上に雪が乗っていたから場所によっては雪が降ったはずだ。

 矮小なシラビソ樹林を抜けて再びハイマツ帯に変わり南峰への登りにかかると先行していた5,6人のパーティーに追い付いた。と言うよりこのパーティーは登山道上に雪が無いのに全員がアイゼンを装着するために停止していたのだった。なぜここでアイゼン装着なのか理由は不明だ。私はノーアイゼンのまま登っていくが、部分的に残った凍った雪が登場するが数m程度しか無いのでアイゼンは不要だった。

 高度を上げても同じような状況で一向に雪が増える気配はなく、もしかしたらこのまま山頂までアイゼン不要かと思ったが、登山道が稜線直上から北斜面側へ移ると途端に雪が増えて登山道上を覆っていた。登山者に踏まれて圧雪されているが凍ってはいなかったが、圧雪の度合いが半端なく雪を踏んでも全く沈まないほどで、凍っていないのにツルツルであった。さすがにアイゼンが欲しくなったが、それでもまだ登りなら何とかクリアできるレベルなのでアイゼンを出すのが面倒でそのまま進んだ。この頃には周囲が明るくなり始めた。

 爺ヶ岳南峰直下に到着。だいぶ明るくなってきたがまだライトが必要な明るさで、日の出までまだ余裕はある。最初に中峰に登ることにして往路では南峰はパス。中峰への鞍部への下りはさすがにノーアイゼンでは滑りまくるので今シーズン初めてアイゼン装着。6本爪の軽アイゼンだが効果は十分であった。南峰の北側を巻く区間では積雪は20cm程度で今回のコース中で最も多く、トレースを外すと足首より深くまで潜る深さだった。トレースが無かったらロングスパッツを装着しないとハイカットの登山靴でも靴の中に雪が入ってしまっただろうが、トレースがしっかりしていたのでロングスパッツは付けずに済んだ。。

 鞍部付近の登山道両側にはコマクサ保護用にロープが張られているが、このロープに盛大なエビのしっぽが張り付いていた。ロープを支える鉄の杭には長さ20cmを越える巨大なエビのしっぽが。残雪期の山でもこれほど大きなものは見たことがない。おそらく昨日夕方に山頂にかかっていた雲が原因で、今は弱い北西の風だが雲がかかっていた時には強風だったのだろう。エビのしっぽは氷点下の気温でガスが強風で物体にぶつかると瞬間的に凍り付く現象で、風上側に成長する。よってエビのしっぽは北側に向いていた。

 鞍部から僅かに登り返して縦走路を離れて中峰に向かう。こちらにもしっかりとトレースが付いていて圧雪でツルツルであった。

 無人の爺ヶ岳中峰に到着。いつもよりは疲れたが体力の限界ではなくまだ余裕があった。また、所要時間はいつもより30分長い4時間を見込んでいたのが実際にはいつもと同じ3時間半で、2日連続北アルプス日帰りでもでも意外と歩けることが分かった。まあ、これは昨日が爺ヶ岳並みに楽に登れる蝶ヶ岳だったからだろうけど。ようやくライトが不要な明るさに達してライトザックに収納。弱いながら冷たい風を避けて山頂東直下に移動してまずは防寒着を着込んだ。あとは日の出を待つのみ。

 昨日まで冬型の気圧配置だったので、今日はそれが緩んで大陸性の高気圧に覆われて快晴のはずだったが、残念ながらいつの間にか頭上は雲に覆われていた。また、空気の透明度はイマイチで立山、劔が少し霞んでいるし、近場である常念山脈は唐沢岳や餓鬼岳がかろうじて見えるだけで、それ以南は見えなかった。よって今回は槍も穂高も見えなかったし、八ヶ岳や南アルプスも見えなかった。

 東の空も雲が多く日の出が見られるか心配だったが、四阿山の右肩から僅かに顔を出してくれた。その直前に光の筋が垂直に立ち上がっているのが見えた。これは初めて見る現象だが「サンピラー」と言われるものに違いない。見えていた時間は5分程度で日の出を迎える頃には消えてしまった。

 中峰山頂には途中でアイゼン装着していたパーティーが大挙してやってきて、記念写真を撮影して鹿島槍へと向かっていった。このペースだと今日も種池山荘に宿泊だろうか。中峰を巻く縦走路には他にも鹿島槍方面へ向かう登山者の姿があった。その鹿島槍は真っ白ではあるが、山肌の岩の凸凹が見えているで積雪量はそれほどでもないようだ。でもこの状況では南峰から北峰に行くのはほぼ不可能だろう。南峰から急激に下る最後の岩壁が曲者で、ここが凍っていると特に下りはヤバい。この積雪量ではアイゼンは岩に当たって効かないだろうし、ましてはピッケルが使えるような積雪量でもない。もっと雪が多い時期の方が安全だろう。ちなみにデジカメの最大ズームで鹿島槍南峰山頂を撮影したがまだ無人で、新旧2本の山頂標識が立っているだけであった。

 冷池山荘は改装工事のために今年の宿泊は終了しているが、どうもテント場はまだやっているようで、写真ではテント数張が確認できた。おそらく昨夜は強風だっただろうしこの寒さだから真冬の装備が必要だろう。気合が入った連中で私には真似できない。

 鹿島槍と爺ヶ岳の間にある棒小屋沢を見下ろすと紅葉はイマイチ。今の状況なら「三段紅葉」が見られてもいいはずだが、稜線の白の下はあまり紅葉していない。全く紅葉していないわけではないが明らかに鮮やかさに欠ける。帰りに柏原新道中腹で紅葉の状況を確認したが、山肌を黄色に染める主役であるダケカンバがほとんど紅葉していなかった。これは昨日の蝶ヶ岳でも同じで、緑のまま落葉しているか、僅かに黄色くなっても葉の半分以上が枯れて茶色の方が目立つ状態だった。紅葉しているのはミネカエデが中心で、ナナカマドは半分くらいが赤く染まっているが、残り半分はダケカンバ同様に茶色く枯れた葉が混じっていた。涸沢ではそれなりの紅葉が見られたらしいがそれは例外的で、北アルプスの大部分では今年の紅葉は大外れだろう。これはおそらく猛暑の影響だろう。。

 昨日よりは気温は高いがそれでも体を動かさないと寒いくらいであり、午前6時過ぎに南峰に向かって出発した。帰りは明るくなっているので盛大なエビのしっぽを激写。こんなのは普通は厳冬期でしか見られないだろう。少なくとも残雪期ではここまで大きいのは見たことが無い。

 爺ヶ岳南峰に登り、写真撮影してここでアイゼンを脱ぐ。この先は圧雪区間は僅かなので、滑りやすい箇所はわざとトレース横の新雪を踏んで下れば滑ることはない。種池山荘までの下りでは何人もの登りの人とすれ違うが、意外と軽装な人が多い。足元を見るとアイゼンを装着している人は皆無であったが、そもそもアイゼンを持っているのか疑わしい人も。アイゼン無しでも南峰までは行けるけど中峰は無理だよ。

 往路では暗くて分からなかったが、矮小なシラビソ帯はエビのしっぽが張り付いていた。爺ヶ岳でこの情景を見たのは初めてだ。小屋に東側の夏場はお花畑になる斜面は雪に覆われて真っ白だった。

 種池山荘から下山にかかると先行して下り始めている人が目立ち、いつもの週末よりは下山が早いような印象を受けた。通常の週末なら私が下山している時間帯に下っている人は少数であるが、今回は下りで10人以上を追い越したので間違いなく多かった。でも登りの登山者も多く、通常の週末と大差なかったように感じた。夏山と同じような小さなザックで防寒装備は大丈夫かと思える登山者も少なくなく、どれほどの人が南峰より奥に行けないのだろうかなどと考えたりした。今はネットで個人の山行記録を見れば最新情報が得られ、積雪状況は簡単に把握できるので事前の準備に大いに役立つが、見ていなければ話にならない。

 登山口に降り立つと駐車場は満車のままで、対岸の駐車場も満車のように見えた。まだ時刻は午前8時半なのでこれから登り始める人もいたが、こちらは2日連続北アルプスでもう満腹(笑) ほとんど汗はかかなかったので軽く着替えて大町市街で買い物を済ませてから帰宅した。

 

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